2018年7月27日金曜日


「子どもは静かに溺れます!」医師呼びかけ反響

読売オンライン 2018.7/25() 14:01配信

子どもの溺水に関する啓発イラスト(「教えて!ドクタープロジェクト」提供)

「子どもは静かに溺れます!」。長野県佐久市の医師会がスマートフォンのアプリなどで呼びかけた注意が反響を呼んでいる。子どもは溺れたら騒ぐと考えがちだが、実際は声も出さずに沈むことが多い。国も周知を始めた。
 この注意喚起は、佐久総合病院佐久医療センター(長野県佐久市)の坂本昌彦小児科医長(41)が発案。昨夏、当時1歳だった長男が、10秒ほど目を離した隙に「音も立てず浴槽に沈んで溺れそうになった」ことがきっかけだ。
 坂本医師が調べると、特に子どもはこうした溺れ方が一般的だとする米国の研究を見つけた。子どもは何が起きたのか分からず、呼吸しようと精いっぱいで声を出す余裕もないという。

子どもが溺れる時の様子について「バシャバシャもがくのは映画の世界だけです」と指摘。何が起こったのか判断できず、声を上げることができなくなる「本能的溺水反応」が見られるといい、SNS上では「経験あります」「本当に怖い」など、大きな反響を呼んでいます。

水難救助専門家のフランク・ピア博士によると、溺れている人は『呼吸をすることに精いっぱいで、声を出したりすることができず』『手や腕を振って助けを求める余裕がなく』『上下垂直に直立し、助けが確認できない状況では足は動かない』といいます。この現象は米国の沿岸警備隊の間では常識のようです。

本能的溺水反応は子どもだけではなく、大人にも起こりうるものです。ただし、子どもの場合は自分に何が起きているかわからず、沈む速度も速いため、特に『静かに早く溺れる』と言われています」

おぼれたケースの90%は浴槽

坂本医師によると、溺れかけたケースの9割は浴室でした。溺れ方はさまざまで、親の洗髪中に浴槽内で足が滑って溺れたケースや、浴槽外からおもちゃを取ろうとして頭から浴槽内に落ちたケースもありました。入浴は毎日の生活習慣であり、浴槽は身近な存在です。浴室に子どもが一人で入らないようにしたり、残り湯に注意したりするなど、工夫が必要かと思います。

また、鼻と口を覆うだけの水があれば、つまり水深が10センチ程度であっても溺れると言われており、『浅いから大丈夫』というわけではない、と理解することも大事です」

また、水中で子供がおぼれてしまった場合は、「水中での時間が5分を超えると、脳に後遺症を残す可能性が高くなると言われています。水中から引き揚げた後の処置は、次の順序で行ってください。

1.平らな場所に寝かせる
2.
意識があるか確認する(意識がなければ人や救急車を呼ぶ)
3.
意識がなければ、絶え間なく心臓マッサージと人工呼吸を行う

 ことが大切だそうです。

「最近はお風呂用の浮輪(首浮輪やおむつ型浮輪)が出回っていますが、親が目を離したすきに、これを使用していた子どもが溺水してしまう事故が起きています。首浮輪は空気が十分に入っていない、あるいは抜けていると容易に口や鼻が水面下に沈みますし、おむつ型浮輪は乳幼児の重心の位置が高くなるため転倒しやすいです。そして、いったん転倒すると元の位置に戻らないため、溺水となる可能性が高くなります。

浴槽用浮輪は事故を引き起こすリスクがあり、小児科学会は使用しないように勧告しています。小児科医としてもこのグッズは危険だと考えており、お勧めしません。

 大人が気を付けるべきことは

 「水の事故が起こると『どうして目を離したのだ』と保護者や監視員を責める論調がインターネットの掲示板などでよく見られます。確かに目を離さないことは大切ですが、子どもの敏捷(びんしょう)性は大人の想像の上を行く場合があります。これは子育てをしている方であればよくお分かりいただけると思います。常時目を離さないでいることは現実的には不可能です。視界から外れてしまってもすぐに溺れないために、次のような対策が考えられます」

・川遊びでは必ずライフジャケットを着用する。脱げやすいビーチサンダルは避け、ウォーターシューズを着用する。
・浴室の残り湯は抜いておき、浴室のドアは鍵がかかるものにし、柵をつけて近づけないようにする。
・複数人で入浴する習慣をつける。